「DESIGN WEEK TANGO 2021」(2021年6月24日~27日開催)公式プログラムとして、多様なバックグラウンドをもつクリエイターたちが、丹後エリアを代表するテクノロジーのひとつ「丹後ちりめん」を題材に、素材の新たな可能性の発見を試みるワークショップ「Hacking the Known」を完全オンラインにて実施しました(主催:DESIGN WEEK TANGO2021 運営事務局、運営:株式会社ロフトワーク)。
レポート−REPORT
Hacking the Knownとは
DWT2021 参画企業の協力のもと、普段は市場に流通することの少ない未精練の丹後ちりめんを、素材として全国各地の7組10名のクリエイターへ郵送することを皮きりに、丹後ちりめんに関する基本情報のレクチャー → 生地を用いた実験 → 作品制作 → プレゼンテーション →展示、という流れでワークショップを展開しました。約1ヶ月の期間で、物理的距離や専門領域の垣根を超えた「知見の交換と議論」の機会が生まれました。
参加者それぞれに異なる視点/アプローチから実験は行われ、形状や質感が変化する工程に着目したテキスタイルデザイン、「光」や「音」の環境をつくる装置、「化学変化」に着目した茶道具、「精練工程の体験」自体をパッケージ化したプロダクトアイデア、はたまたAR(拡張現実)を用いたアニメーションなど、アウトプットは多種多様に。
ワークショップ参加クリエイターのうちの約半数がDWT2021 会期中に現地を訪問し、製品開発やアート制作についてのヒアリング・リサーチを行うなど、協業につながるアクションも実際に起こりました。
「Hacking the Known」を通して再発見・再解釈された丹後ちりめんの可能性
素材としての機能特性はもちろんのこと、この特別なテキスタイルを、品質や数量を担保した製品として製造できる技術力や開発力、対応力、体制を備えていることこそが丹後の「産地」としてのポテンシャルです。テキスタイル産業以外にも、金属加工業や樹脂加工、木工にいたるまで、高付加価値製品の製造や特殊加工が可能。そんな技術と人、経験値の集積地として丹後エリアを捉え直してみると、どんな見え方になるでしょうか。
DWT2021 での各種試みでも明らかになったように、オンラインツールを活用することで、距離と時間のバリアが解消され、離れた地域にいる人の間でもコラボレーションを始める
ことが容易になりました。
同時に、「無茶振り」に応えられる独自技術と経験値に触れるためは、やはり「現地に訪れ直接対話する」ことが欠かせません。豊かな自然に囲まれ、農業、漁業も盛んな丹後は、「ワーケーション」的な価値観においても非常に魅力的な地域です。オンラインでつながりを作ったのち実際に現地を訪れ、風土が育んできた文化と産業の有機的な連なりをフィジカルに体験しながら、新たな価値創出に取り組む。そんな「滞在型のモノづくり」の拠点として、モノづくり企業だけでなくデザイナーやアーティスト、リサーチャー、スタートアップなど、職種領域を超えたプレイヤーが活動する…。丹後の未来の姿、そのひとつのプロトタイプともなるような時間がDWT2021 において実現の一歩を踏み出したのではないだろうか。
参加クリエイターの声
ちりめん独特のシボが、絹糸のミクロな構造から生まれているということを、今回初めて知りました。イマジナリーな領域が多様な価値をもつ現代において、情報と共に、ちりめん生地に触れたり、身に纏ったりすることは、非常に付加価値のある体験になると思いす。」「ちりめんという特殊な日本特有の布が持つ“シボ”と“透け感”。この2つのコントロールに多くの可能性が残されていると感じました。歴史あるマテリアルであるからこそ重みのある学びと発見に繋がると感じました。
生地を織る際に残糸が発生することがあります。もう一度生地を織るのには足りないほどの残った糸。この残糸を使って刺繍を施すことで、糸としての再利用、現代におけるサスティナブルな活用を行うことができるのではないだろうか?