レポート−REPORT

「DESIGN WEEK KYOTO 2024 -Evolving “MADE IN KYOTO”-」学生参加レポート①

MADE IN KYOTO TOUR【8/26(月) in 京都市北部エリア】京都×ブランド ~生涯ファンの作り方とは~

5日間にわたり開催された『DESIGN WEEK KYOTO 2024-Evolving”MADE IN KYOTO”-』のツアー初日。ツアーA「京都×ブランド〜生涯ファンの作り方とは〜」に参加し、京都市北部エリアにある様々なモノづくりの現場を訪れました。

同志社大学広告研究会add’sからは、下宿で京都に住み始めてまだ2年目の都築と、文学部で西洋史を専攻している髙城の、計2人で参加しました。

今回のツアーには、地域の歴史とモノづくりの各現場がどのような関わりを持っているのかを知る
「X-Culture Coordinator(クロスカルチャーコーディネーター)」の方が同行してくださり、私たち参加者とモノづくりの担い手との交流や学びの機会をアシストしてくださいました。

  • ツアーのスケジュール

    ①川島織物セルコンでのオープンサイト(10:00~11:45)
    ②国際会館のレストラン『The Grill』でランチ(12:00~13:00)
    ③VIGORE(ビゴーレ・カタオカ)でのオープンサイト(13:15~14:00 )
    ④吉靴房でのオープンサイト(14:40~15:40)

ツアーの集合場所は、最初のモノづくりの現場である『川島織物セルコン 本社 市原事業所』
最寄りのバス停から徒歩5分。着いてみると、視界いっぱいに広がる全面白塗りの大きな建物。
そして玄関口には警備員さんが。何やら厳粛な雰囲気。これからどのようなモノづくりの現場を見ることができるのかとドキドキしながら、中へと入っていきました。

手仕事の伝統技術から機械による量産技術まで。
時代とともに織りなす京都。『川島織物セルコン』

180年もの歴史を持つ老舗ファブリックメーカー『川島織物セルコン』
川島織物セルコンでは、クッション、カーテンなどのインテリアファブリックや呉服、美術工芸品などの織物製品が、企画・デザインから、染め、織りまで全て一貫して生産されています。
美術工芸品として日本最高峰の織物と言われる綴織は、手仕事で無限に糸を組み合わせることで、ありとあらゆる色を表現することができます。そのため、遠くから眺めると、まるで写真のように見える美しいグラデーションを織物で表現することができるそうです。
しかし、このような伝統技術を駆使した製品は、1つ作るのだけでも膨大な時間と労力を要します。
近年では、機械による量産技術も発達し、生産にかかる時間や労力が大いに削減されました。
昔と今の技術の融合によって生まれた様々な織物製品が、ここ京都、川島織物セルコンから、日本各地だけにとどまらず国境を超えて、人々の日常に届けられています。

2022年のミラノデザインウィークに出展された作品群
機械技術による織物。文字も全て織物で表現されています。

京都国際会館のレストラン『The Grill』でランチ

川島織物セルコンから20分ほどバスに揺られて、次は国際会館へ。
さてさて、待ちに待ったランチのお時間です。
私たちは揃って「国産鶏モモ肉のハーブパン粉焼きトマトソース」を注文。
ハーブの匂いが香ばしく、チキンとトマトソースの相性も抜群で、とにかく絶品でした。
またこの時間に、他の参加者の方々とツアーに参加した背景や、川島織物セルコンの工場見学の感想などを話し合うこともでき、交流を深めることができました。

国産鶏モモ肉のハーブパン粉焼きトマトソース

モノに溢れたこの時代、あなただけの相棒の一台を。
人生観が変わる自転車を作る。『VIGORE』 

1929年創業の片岡自転車商会を礎とする自転車メーカー、VIGORE(ビゴーレ)。
VIGORE(ビゴーレ)とは、イタリア語で「元気、活力」などを意味する言葉だそう。
VIGOREは、自社の自転車を「手足の延長として機能する最高級の道具」と位置づけ、
全ての自転車を受注生産、カスタムオーダーメイドしているそうです。
そんなVIGOREの自転車は、移動、運搬などの手段のための自転車というよりむしろ、
「愉しみ」のための自転車、持ち主の「相棒」としての自転車。
壊れたり汚れたりしてしまったら、いつでも買い替えができるこの消費の時代に、
人々のモノの選び方、モノとの過ごし方は大きく変化しています。
VOGOREの自転車は、モノづくりの原点に立ち返り、1つのものを長く使うことの良さや大切さを呼び起こすことで、今を生きる人々に新たな人生観をもたらしてくれるのです。

工房には見慣れない機械がたくさん。どうやって使うんだろう。。。
鉄を溶かし、継ぎ手なしで直に溶接することで、乗る人の要望に合わせて自由に角度を調節できるそうです。(ティグ溶接)

こだわりと技巧が詰まった靴で日々の歩みを足元から支える。
“無駄にしない”がモットーの靴工房。『吉靴房』

続いて私たちはタクシーとVIGOREの自転車の二手に分かれ西陣へ。靴づくりの小気味よい音と京都らしい和の雰囲気が印象的な吉靴房(きっかぼう)にやってきました。
ここでは普段なかなか目にしない靴づくりの現場を拝見させていただきました。
驚くことに一般的な靴をつくるには100以上の細かい工程があるのですが、その全ての工程が洗練された形体と履き心地をつくり出すために必要になるそうです。
靴づくり自体は当然のことながら、吉靴房では生産や素材にも思いが込められており、素材となる革には我々が食べる牛や豚を屠畜する過程で出るもののみを使用しています。
また必要に応じた分だけモノをつくり、修理しながら長く使うことを理想としているそうです。
無駄を極限まで減らそうとする吉靴房のモノづくりへのこだわりに感銘を受けるとともに、大量生産・大量消費で成り立つ我々の生活を考え直す必要性を問われているように感じました。

靴づくりの様子を見せていただきました。
余った革で作成した小物細工。細かな欠片まで余すところなく徹底的に使い切ります。

まとめ ・ 総括

技術が次々と進歩し、価値観が目まぐるしく変化する社会のなかで、モノづくりの形態や職人が作り出すモノはときに変化を求められます。
しかし職人は移りゆく時の中でも揺らがないこだわりや強い思いを持っており、「京都」という土地に根差したファンとともにモノづくりを続けていると知りました。

また自分の無知さと世界の広さを実感しました。
私たちは消費者として何気なく様々なモノを購入して使っていますが、そこに至るまでには先ほど述べた職人のこだわりや思いを含め、想像できないような過程や技術が秘められていると学ぶことができました。世の中にあふれるモノ、ひいては仕事に対する見え方が大きく変わるきっかけとなる非常に有意義なツアーであったように思います。

執筆:同志社大学広告研究会add’s 都築玲子 ・ 髙城優弥