レポート−REPORT

「DESIGN WEEK KYOTO 2024 -Evolving “MADE IN KYOTO”-」学生参加レポート②

MADE IN KYOTO TOUR【8/26(月) in 京都市中部・宇治エリア】素材×コラボレーション 〜コラボのポイントとは〜

『DESIGN WEEK KYOTO2024 -Evolving "MADE IN KYOTO"-』の中で5日に渡って開催されたMADE IN KYOTO TOURSの初日。
私たちは京都市中部・宇治エリアを巡るTour Bに参加しました。

  • ツアーのスケジュール

    ①佐藤喜代松商店(10:00~11:00)
    ②誉勘商店(11:20~12:20 )
    ③楠岡義肢製作所(14:20~15:20)

前日に行われた今宮神社での神事の甲斐もあってか、天候に恵まれ青空が広がっていました。

『相手らしさを理解し、相手らしさを表現する』

ツアーは佐藤喜代松商店代表取締役の佐藤貴彦さんのお話から始まりました。

「漆は木製製品のもの」と考える人がほとんどではないでしょうか。しかし、その常識を佐藤喜代松商店は打ち破り、エレベーターの扉やタンブラー・様々な美術品など、材質に関わらず漆を使用することを実現可能にしました。

クライアントとのエピソード、作品について

また、漆を求めるクライアントは日本人だけではないそうです。佐藤さんによると、クライアントはインド、中国、ドイツ…など世界中に広がっているとのことです。つまり、言葉や文化を超えた多種多様なニーズを形にすることが求められます。
このような世界中の願いを叶えるためには、優れた技術と熱意が必要になります。
佐藤さんは「最も大切なことは相手らしさを理解し、相手らしさを表現すること」と締め括りました。
その姿勢をまさしく体現し、日々進化し続けていると実感することができました。

佐藤さんから説明を受けた後、実際に作業が行われている工房へ移動しました。工房では、原料の漆から塗料として使用できる品質にするまでの工程を説明していただきました。

原料の漆について語る佐藤さん

漆の色合いや求められる漆のテクスチャーによって配合や機械のプロペラの位置を変化させるそうです。
漆の加工作業ひとつを取っても奥深さや職人の繊細な技術を感じました。

『伝統を守り、挑戦を続ける』

佐藤喜代松商店を後にし、続いて向かったのは誉勘商店。
伝統的な日本家屋、一面に置かれた反物の美しさに魅入ってしまいました。

取り扱われている反物

誉勘商店13代目にあたる松井夫妻からお話を伺いました。

金襴について説明する松井夫妻

「金襴」という絹織物をご存知でしょうか?金糸を横糸に使用し、丁寧に丁寧に織り込んでいく豪華絢爛な織物です。
誉勘商店では多種多様な金襴を取り扱っています。
金襴は、非常に製作過程が複雑で一つの織物を作るまでに緻密な作業と長い時間がかかるそうです。特に金糸の製造工程は、私たちの想像を遥かに超えるものでした。
まず金糸の元となる紙に漆を塗り、その上に金箔を貼ります。その紙を糸として使うことができる細さ(髪の毛くらい)まで手作業で裁断するそうです。
現在では機械で製作されることもあるそうですが、職人の技量と受け継がれてきた技術力の高さに心底驚きました。
さらに、誉勘商店では新たな織物の開発・デザインも行っています。
縦糸と横糸が同時に見えるように織り込むことで、カメレオンのように見る角度によって生地の色が変化する織物です。

見る角度によって色が変化する。「何色」と形容し難い美しさがある。

伝統を繋ぎつつ、挑戦を続ける。誉勘商店が長い歴史をもつ理由が垣間見えた気がしました。

『見せないものから、魅せるものへ。』

Tour Bの最後に訪れたのは楠岡義肢製作所。
安田伸裕さんからお話を伺いました。

コルセットについて語る安田さん

楠岡義肢では義肢やコルセット、インソールなどをオーダーメイドで製作しています。
まず、義肢を実際に作っている場面を見学させていただきました。足の型取りに使った石膏は本来であれば廃棄になってしまうそうですが、くすおか義肢では木屑を混ぜ石膏の使用量を削減し、木の香りを楽しむアイテムにするという、環境を配慮したサービスをされているそうです。足環境にも、人の想いにも配慮した粋なアイデアに感動しました。
また、楠岡義肢ならではのサービスは他にも数多く存在します。
例えば、藍染めを施したソケット。本来、義足は隠すもの、見せないものとされてきましたが藍染めによった機能性だけでなくオシャレで魅力的な物になります。また、義足だけでもインテリアのような美しさがあります。

藍染めを利用した義足。見る人を魅了するデザインになっている。

他にも、「アップサイクリングする義肢」、「アーティストとコラボする義肢」などさまざまな義肢を製作しています。

コラボ品など、個性豊かな義肢が並ぶ

機能面だけでなく、人の心にまで寄り添った義肢の製作をする「楠岡義肢」の魅力に触れました。

まとめ ・ 総括

1日のツアーを通して、ものづくりに本気で取り組む大人たちのかっこよさを垣間見た気がします。日々進化し、楽しみながら新たなものを生み出していく姿は、将来についてぼんやりとしか考えていなかった私にとって鮮烈でした。「どのようにこれから生きるのか」考える上で非常に有意義な経験をさせていただくことができました。

執筆:同志社大学広告研究会add’s 瓜田心愉