ストーリー−STORY

文化ビジネスコーディネーターとDWKが果たす役割、そして目指す未来

すべての出発点、そして最終的な目標は“地球環境をよくすること”

「すべての出発点、そして最終的な目標は、“地球環境をよくすること”」と語るのは、COS KYOTO株式会社代表、そして DESIGN WEEK KYOTO ファウンダーの北林 功。100年後、1000年後の未来を想像し、「サステナブル」と「クリエイティブ」をキーワードに、さまざまな「地場産業をアップデート」するプロジェクトに携わる「文化ビジネスコーディネーター」という役割とその価値観について語る。

それぞれの土地の気候風土の中で育まれ、職人の技術と自然の恵みから得られる原材料を使ってつくられる「地場産業」。京都にも、西陣織や清水焼、北山杉など、地域に根付いたものづくりが何百年も受け継がれている。

北林も、地場産業の魅力や可能性に惹かれたひとり。「文化ビジネスコーディネーター」という肩書きで様々なプロジェクトに関わっているというが、そもそも「文化ビジネスコーディネーター」とは具体的にどんな仕事なのか?

「モノの作り手の人たちは、世界に誇れる技術を持っています。でも、現代は大量生産の安い製品が、すぐに手に入る時代です。いくら技術やクオリティが高いと言っても、実際のところ、伝統的な地場産業やそれを支える職人さんたちが生き残っていくのはとても難しい。」

そこで、登場するのが「文化ビジネスコーディネーター」だという。COS KYOTOは、経営戦略の立案やブランディング、新商品の開発、国内外への販路開拓など、作り手と並走しながらグローバルに通用する「地場産業をアップデート」するサービスを提供している。

「すべての出発点、そして最終的な目標は、“地球環境をよくすること”です」と語る北林。「46億年という地球の歴史上で、たった数百万年前に生まれた人間が環境を壊して、特に工業化以降の数百年で、資源を使い果たそうとしている。これは大変なことだと、子どもの頃から地球環境に関心がありました。」

京都や東京での大企業での就職経験を経て、京都や故郷である奈良に向ける目も変わった。奈良には1000年も続いている地場産業があることも知った。「何百年も継続しているということは、まさしくサステナブルなビジネスではないか、と目から鱗でした。」

京都には長い歴史に育まれた地場産業が根付いていながら、工芸品を使う人が減り、継承者不足も重なって、廃業する工房が増えている。そして、こんなにもおもしろくて、確かな技術を持った人同士がすぐ近くにいるのに、交流はほとんど行われていない。

この状況を変えるために何かできることはないか考えた。そこで生まれたのが、自らがファウンダーとなり、代表を務める「DESIGN WEEK KYOTO(DWK)」だった。「多様な交流を通じて、京都を創造的な街にする」ことを目的に、国内外の多様な人たちが交わるイベントとして2016年から継続している。

ハイライトは、モノづくりに興味がある人が工房・工場を訪問して製品が生み出されるプロセスを体験し、作り手と交流できる「OPEN HOUSE」。ほかにも、作り手側の企業同士が交流できる企画や、トークセッション、海外のモノづくりに関わる団体や人々との交流も積極的に行っている。

「例えるなら、DESIGN WEEK KYOTOは、土壌をひたすら耕している感じ。そこからどんな花が咲くのか、どんな野菜が生まれてくるのかはこれからの楽しみ。より広く、より豊かに、土壌を耕していきたいです。」

変えるべきところ、変えてはいけないところの本質をしっかり考え抜いた上で、新しい価値を生み出すことを大切にする。「文化ビジネスコーディネーター」とは、今現在や10年、20年先の未来はもちろん、100年、1000年先の未来を想像して、様々な視点からサステナブルかつクリエイティブに社会に関わる、夢も責任も大きな仕事だ。

COS KYOTO 株式会社 代表取締役 / DESIGN WEEK KYOTO 実行委員会代表理事

自律・循環・継続する社会の構築をテーマに文化ビジネスのコーディネートを行う。2016年にはDESIGN WEEK KYOTO を発足。イベントやクラフトソンを開催し、京都の地場産業、そして街を盛り上げることに共に取り組む人々が集まる「コミュニティ」の形成を目指す。